結婚は二人だけの問題、とはいきません。家族に反対されてうまくいかなくなることだってあります。国際結婚の場合、「世間に後ろ指さされますよ」というような事を言う親に反対されるケースも増えて来ます。相手の国籍や見た目が、親を始めとする周囲の人間の反応を大きく左右します。欧米諸国の白色人種との結婚は、親も大して反対しない場合が多いようです。「うちの娘はフランスの人と結婚して、今はパリに住んでいるんです」なんて、自慢そうに言う親もいることでしょう。周りの人も「あら素敵ね」というのが大方の反応でしょう。それでは「息子がコンゴの女性と結婚しました」と言ったらどうでしょう。「あらユニークね」とか「大胆ですね」とか言われるかもしれません。「娘がバングラデッシュ人と結婚しました」なら、「まあ」とか「それはご心配でしょう」という反応。「息子がフィリピン人の嫁をもらいまして」でも、息子がフィリピンパブで遊んで子供ができたんだろう、と想像されます。そこで「息子がフィリピンの銀行に勤めてる方と結婚したんですよ。アメリカでMBAまで取った優秀な方で」とまで言わなければ、と考える親も出てきます。間違っても「ダンスがお上手なお嬢さんなんですのよ」なんて言いません。社交ダンスではなくて、ポールダンスだと思われるのがオチだからです。偏見がなくならない限り、先に例を挙げたような誤解をされるのはどうしようもないので諦めましょう。申し訳ないのですが、親には頑張ってもらうしかないのです。
日本の国際化が進んできたかどうかは、賛否両論あります。当たり前のことですが様々な考えをもった日本人がいて、いい制度も悪い制度もあるということです。いずれにしても国際結婚の家庭が、周囲の好奇心を駆り立てるのは確かです。私も「どこで出会ったの」という質問は必ずされますし、「何語で会話してるの」「子供の国籍は」という質問もよくされます。親しい友人なら、セックスについても質問してきます。国際結婚のカップルは、なぜか性的な興味を呼ぶようです。
どんな類の関心にしろ、四六時中では疲れてしまうのは事実です。まるで国際結婚家庭のモデルとして、皆に観察されているような気がする時さえあります。けれども開き直って「私たちは違うんです」ということにしてしまえば、右に倣えの日本社会で、自分らしく生きやすいという面もあると思います。暮らす自宅の近所の人は、最初はあれこれ詮索したにしても、そのうちに普通の夫婦と変わらないんだ、ということが分かってくるので特別視の度合いは弱まってくるでしょう。一番質問を浴びせられるのは電車の中です。その場限りの関係と考えてか、あまり遠慮なく質問をしてくる人たちが多いのです。私は年配の男性にセクハラまがいの質問をされ、あまりにしつこいので鉄道警察にお願いしたこともありました。その男性は警察官に、「こういうマイノリティーが、最近は意見を主張しすぎるんですよ」と訴えていました。この場合は不愉快な思いをしただけでしたが、もしも異常なほどの敵意に満ちた発言や行為に出会ったら、それがエスカレートする前に警察に相談することが必要です。
国際結婚の夫婦が周囲の関心を呼ぶ、という話でしたが、私自身も電車の中で目にする異国籍カップルの観察は時々します。余談になりますが、日本人女性が国際結婚した場合に、相手の国のファッションに傾倒する人を多く見かけます。黒人男性の横に立つ日本人らしき女性が、ドレッドヘアーにしていたり、フランス語を話す男性の横の彼女がフレンチブランドのドレスを着ていたり。国際結婚がきっかけで、ファッションセンスも変化したのかも知れません。(おそらく私たち夫婦を観察している電車の中の人々は、こういう勝手な分析をしているのでしょう。)