誓いの言葉の単語の意味が分からん!
私が結婚したのは、イギリスの片田舎の町役場でした。まずは役所に行き、結婚式を希望する日時を予約します。当日の予約はできませんが、翌日以降で予約ができます。また、証人となる二人の人間が必要です。この証人たちと、役所の担当者の前で、結婚の誓いの言葉をいい、婚姻が成立する、という手順になります。
証人となったのは、主人の母親とその友人の女性でした。当日、証人となってくれた友人の方が、幸福な将来を祈って、と馬の蹉跌を白いリボンでデコレーションしたものをプレゼントしてくれました。さて、役所の担当者の前で誓いの言葉を述べなければならない時になりました。
はっきりと覚えていないのですが、主人と私と一人ずつ宣誓しなければならなかったのだと思います。私の番になって、渡された紙の文句を読もうとしたのですが、意味が分からないのはさておき、発音すらできない単語もあり、その場に居合わせた皆の失笑を買ってしまいました。まあ、いかにも形式だけの結婚式でしたが、意味が分からなくとも、「さあ、これから二人で家庭を築くんだ」というような気構えを自覚させてくれたような気がします。その後、しばしばこの初心を忘れていたにしても。
イギリスには戸籍というものがありませんが、婚姻届は提出します。この婚姻届には、新郎新婦、それぞれの父親の名前とその職業が記載されます。洋の東西を問わず、結婚は長い間家同士の問題であるところが大きかったのでしょう。この父親の職業欄は、たとえ父親が死亡していたりしても生前の職業が記載されます。この婚姻届の記録をたどってゆけば、先祖がどんな仕事をしていたのかが分かり、面白いかもしれません。
ところで、日本で国際結婚の婚姻届を出す際には、結婚具備証明書というような書類が必要となります。これは、外国籍の者が出身国の法律で結婚するための資格(独身であることや、年齢など)を満たしていることを証明する書類です。けれども、私がイギリスで婚姻届を出した時、せいぜいパスポートを見せたくらいで、その他の書類はなにも要求されませんでした。重婚などの問題が明らかになった場合でも、個人で責任を持って下さい、ということなのでしょうか。
例えば、一方の国にだけ婚姻届を提出して、もう片方の国に出さないでいれば、その婚姻届を出さないでいた国で別の相手と結婚したとしても、本人以外に知る人はいない、という訳です。まるでスパイのような生活になるのでしょうが。
二重国籍の是非を問う議論の中で、重婚を防止するためにも重国籍は禁止するべきだ、という意見があるようです。そもそも重婚を禁止する理由として、遺産相続などの際のトラブル防止、あるいはビザ目的での偽装結婚の防止、などが挙げられます。また実際の生活上の問題として、サラリーマン世帯の私たちが、二つの家庭に十分な収入や子育てをしていく上で必要な配慮ができるとは考えられません。
もちろんイスラム教国の諸国では、重婚が認められている国もあります。日本籍の女性がイスラム教国の男性と結婚する際に注意が必要となるのは、浮気をした、という理由で離婚を要求することはできない、ということです。もしも、一夫一婦制を望むのであれば、結婚前に契約書をつくって約束しておくことも、一つの方法のようです。いずれにしても、夫婦の国籍が異なれば、それぞれの国の規則にもよりますが、重婚は可能ですので、二重国籍を禁止したところであまり関係はないように思えます。