味噌汁と納豆のおいしさは、万国共通

味噌汁と納豆のおいしさは、万国共通

 私はシンガポールで足かけ6年暮らしたことになります。最初は旅行者ビザで入国し、新聞の求人広告とアパート情報を安ホテルのベットに広げている、という光景が私たち夫婦のスタートでした。

 シンガポールは日本とそれほど遠くなく、日系の会社が多く進出しているせいもあり、目抜き通りのオーチャード・ロードを歩けば日本人らしき人々を目にすることができます。海外派遣される社員は30代が多いのか、平日の昼間は奥様とベビーカーに乗った赤ちゃんがたくさんいます。そのオーチャード・ロードの中心となっている高島屋の地下食品売り場に行けば、和菓子屋、寿司屋、お好み焼き、焼き鳥に大判焼きと、異国の地にある日本人たちの心をなぐさめるべく、日本食のブースが所狭しと並んでいます。私も初めての子育てに途方にくれながら、焼き鳥弁当をショッピングセンターで食べたりしていた日々があり、今となればほろ苦い思い出です。

 シンガポール人、特に中華系の人々は、健康食としての日本食に大変食興味を持っているようでした。もともと漢方薬や薬膳のようなものが生活の中に浸透していますので、健康な食生活を心がけようという考えがベースにあります。ショッピングモールやオフィス街にあるフードコートにも、薬膳スープとご飯を出す屋台や、ナツメ、黒砂糖、クコの実、朝鮮人参、乾燥ロンガン、などといったものを煮て作ったドリンク屋が、必ずといっていい程ありました。そのフードコートの中に、日本食の屋台も必須なメンバーとなっているようで、味噌汁の付いた、照り焼きチキン定食やさば焼き定食などが他の屋台より2割ほど高い値段にもかかわらず人気を呼んでいました。スーパーの日本の食材コーナーでも、カレールー、日本ブランドのお菓子などは、地元のシンガポール人の食卓に浸透しているようでした。

 私はアレルギー体質なので、なるべく添加物を避けようと努力しています。シンガポールにいた間も無農薬野菜の宅配やオーガニック食品店をよく利用していたのですが、そういった健康食品店に行くと、納豆、味噌などが抗癌作用があると人気があるようでした。また、緑茶や昆布だしなどもよく売れていました。

 その納豆なのですが、日本から冷凍されて輸入されてきています。そうすると大豆の食感が、いかにも冷凍品らしいものになってしまうのですが、それでも食べたくて自宅の冷凍庫に常備していました。それから、味噌汁。外食が続いたり、旅行から帰ってきたりすると、必ず味噌汁が飲みたくなりました。ですので、冷蔵庫には味噌があり、モロキュウなどは子供の大好物になりました。日本を離れて特に日本食が好きになったような気がします。私がこんな風だったので、次第にイギリス育ちの主人にとっても納豆がご馳走になり(シンガポールでは納豆が割高だったので、私にとっては特別なご馳走のような扱いになっていました)、きゅうりがあれば味噌がないと落ち着かないというような感じになっていきました。

 同様に、クリームやバターをふんだんに使う彼の食生活に影響されて、私もバターロールやクロワッサンにまでバターをつけたり、パイやタルトにはこってりしたクリームをたっぷり添えたりして食べることに慣れてしまいました。脂肪分は、コレステロールさえ心配しなくてよいのなら、大変おいしいものです。

 お互いに食生活の上で影響を与え合っているのですが、それでも朝食時に限っては、主人はご飯では食欲がわかないようで、シリアルかパンを食べたがります。また日本茶やコーヒーを飲んだのに、ミルクティーがないと落ち着かない、というようなことはあるようです。
 


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