住む場所というものは、人生を大きく左右する大切な要素です。出会う人、話す言語、食卓に並ぶ食べ物、あるいは子供のいる家庭なら、通う学校、遊ぶ公園、そんなものが全部、住む場所によって変わってきます。ですので誰もが自分の条件に合う土地に住みたいと考えているのですが、仕事や資金、また親の介護の問題などがあったりすると、なかなか思い通りにはいかないものです。国際結婚の家庭の場合、妥協するということが第一条件としてありますので、お互いに犠牲となる部分がでてきます。住む場所というのは、最初に直面する問題で、どこに住むことにしても一方の故郷からは遠く離れてしまう、というのがほとんどのケースです。実家の諸問題に関しては、国際結婚で遠く離れて生活しているという理由で、他の兄弟の負担が大きくなってしまう場合も多くみられます。そのような事情はあるのですが、国際結婚の家庭は異文化に対して強い関心をもっていたり、海外引越しに慣れていたりするため居住地を比較的自由に選らぶ場合が多いようです。もちろん日本人の家庭も、海外生活に対して肯定的になってきていて、子供がいる家庭は特に、教育上貴重な経験となるという見方も主流になってきています。世界中の主要な都市に行けば、日本人学校があったり、日本食スーパーがあったりと、想像以上に多くの日本人が国境を越えて生活していることに驚かされます。以前のように海外へ行くことが一大事ではなくなり、また航空運賃も国内旅行と大差ない価格まで下がってきたため、海外引越しも気軽にできるようになってきました。もちろん海外移住する場合は勤務先が決まっていたり、留学の場合などでないと、ビザの取得が困難です。国境を越える引越しは、その点で思い通り自由にできるわけではありません。国際結婚の場合は、どちらか片方の国籍を利用してビザを取得することができるので、二つの国で自由に暮らせるという利点はありますが、第三国に移住したい場合は、同じようにビザの問題に悩むわけです。
私たち夫婦の場合は、結婚を機にお互いの国でない土地を選択しました。その理由は、二人が一緒に未知の土地で平等なスタートをしたかったからです。どちらかが通訳しなければならなかったり、役所の手続きを一切しなければならなかったり、という状況は避けたかったのです。お互いの家族から離れている、というのもその面でのストレスもなく良い方法だったと思っています。
友人のタイ人とフランス人の夫婦は、フランス人の夫が寒い冬が耐えられないからどうしてもタイに住みたい、と言って、バンコクで生活をしています。仕事もタイでできる仕事を探してしています。
日本人とスペイン人の友人夫婦は、スペインで生活していますが、いろいろな国で生活してみたい、という夢を語っています。フランス籍の黒人と日本人のカップルは、フランスよりもイギリスの方が人種差別が少なくていい、と言ってロンドンで定住することを選びました。日本人とパキスタン人の夫婦は、障害を持った子供が生まれて、日本でよりもパキスタンでの方がのびのびと育てられると考え、パキスタンへ移住しました。
生まれ故郷を離れると、寂しい思いをすることもあるでしょう。けれども故郷とは、必ずしもある特定の土地を指すのではありません。心を許せる人々であったり、いつでも思い出す風景であったりするはずです。そういったものが世界のあちこちにあったっていいのだと思います。それは、より豊かな人生の一つの形でもあるのです。