同性愛のカップルの場合

 日本では、憲法において「婚姻は、両性(男性と女性)の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定められています。そのために、同性同士の結婚は認められていません。法的に婚姻関係が認められていないと問題になるケースとして、夫婦として何十年も共に生きてきたカップルの片方が死亡した際、残された者には財産の相続など夫婦としては当然あるべき権利が保障されていない、というようなことがあります。また、健康保険や家族控除などの面でも、夫婦としては認めてもらえません。

 ただし、2007年7月に国会で成立した「性同一性障害者の取扱いの特例に関する法律」に含まれている、戸籍の性別変更申請の条件を満たせば、カップルが異性同士となって結婚できることになりました。この条件とは、①2人以上の医師による性同一性障害との診断 ②20歳以上 ③申請時に結婚していない ④子供がいない ⑤性別適合手術をうけている といった内容です。④と⑤が条件となっていることには賛否両論ありそうですが、少しは日本社会が同性愛の存在を受け入れ出したと見ることができるのではないでしょうか。

 他国の状況を見てみますと、現段階(2007年10月)で、オランダ(2001年)、ベルギー、カナダ、南アフリカ、スペイン、アメリカのマサチューセッツ州、アイオワ州などという自治体や国家が同性愛者同士の結婚を認めるようになってきています。自治体の単位では、オーストラリア、ニュージーランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、イギリスなどもこのリストに加えられます。このうち、異性同士の結婚と全く同等の扱いや権限が与えられているのは、カナダとスペインです。例えばオランダやベルギーでは、オランダの永住権を持たない外国籍の人間は同性同士のカップルとして結婚できません。また養子を受け入れる際に、海外からの養子はもらえない、などといった制約がついています。また、こういった国々の他にも、パートナーシップ登録制を取り入れている国々のなかで、同性のカップルの登録も受け付けている国もあります。このパートナーシップ登録というのは、欧米の多くの国々、あるいは自治体で取り入れられている制度で、法律上の婚姻関係になくても、パートナー同士として共に生活している二人が夫婦と同様な法的権利・資格が与えられる制度です。もちろん、法的な婚姻関係よりは権利として弱い部分もあります。例えばニューヨーク市では、市外から転入してきてパートナーシップ登録をした場合、健康保険や、家族として公営住宅に入居希望などの場合に婚姻関係の夫婦と同様の扱いを受けるためには1年待たなければなりません。けれども、これは同性愛のカップルには大変役に立つ制度といえます。

 日本籍の同性愛者が外国籍のパートナーと国際結婚をする場合は、日本では不可能ですので、それが許される相手の国、あるいは外国籍の同性愛者同士の結婚を認めている国においてすることになります。しかし、2002年に日本の法務省が、婚姻要件具備証明書(日本においてその者が結婚をする条件を満たしている、と証明する書類)を国際結婚を目的とする者に発行する際に、結婚相手の性別を記入する欄をつけ足しました。そして、その結婚が同性同士である場合には、婚姻要件具備証明書を発行しないように、との通達をしました。法務省側は、日本国内では同性愛者同士の結婚が認められていないので、この証明書を発行することによって国がその結婚を認めているという誤解をされるのではないかという危惧があった、と説明しているそうです。同性同士の結婚は、国際的に認める方向へ動いていますが、宗教的な理由などから激しく抵抗している地域もありますので状況は慎重に見守るしかないようです。


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